平家岳は10年以上前に板取(岐阜)から一度トライしています。まだ山を歩き始めた頃、実働12時間という藪山に果敢に挑み、あっけなく敗退した経験があります。今回は九頭竜湖(福井)の登山口からトライしました。

先週の経ヶ岳では長歩きに膝がダメになってしまい、自分の体力の無さを痛感しました。九頭竜湖側からの登山道は登り3時間程度。地図では登り口から送電線鉄塔巡視路合流点までがかなり急ですが、そこから先へは緩やかなアップダウンが続いています。条件が良ければ自転車は強い味方になります。そしてWebで見た、頂上から真っ直ぐに降りているあの道を、運が良ければ自転車で下ることが出来ます。
思い切ってMTBで出動しました。

登山口は面谷川の上流部にあり、未舗装の細道を車で進んで行くのですが、
その昔伝染病でこの奥の集落の人々が大勢亡くなったそうで、
途中多くの墓や石碑があり、なんとも陰鬱な林道でした。

AM. 8:00 面谷登山口スタート。
運良く林道最奥の登山口まで車で入ることが出来ました。登山口は約720m付近、巡視路合流点まで標高差約400mを一気に登らなければなりません。予想通りの急登で汗が噴き出てきました。木立に覆われた細尾根であり、石や木の根などで自転車は難しそうです。900m付近で一瞬視界が開け、尾根の両側を見ることが出来ました。
期待の紅葉は今ひとつという感じ。ただ、「晴れの特異日」は大当たりで、今日一日天気の心配は必要ありません。時々現われる秋色に気を紛らせ、黙々と上り続けます。
AM. 9:00 1140m 鉄塔巡視路合流点着。
約1時間で主尾根にはい上がり、日ノ谷方面からの巡視路と合流しました。上記の地図では分からないのですが、この合流点から北西方向に延びる長い尾根上に巡視路が通っており、ちょっと気になります。機会があればトライしてみたいものです。登りの核心部を何とかやり遂げゆっくりしていると、男性登山者が登って来ました。彼は軽く会釈だけをし、そのまま歩いて行かれました。私も慌てて出発の準備をします。この先今の様な大登りはないものの、まだ最低2時間は掛かります。
良い道であってほしいのですが・・・。
朝霧の九頭竜湖
先の巡視路合流点から50m程一旦降り、また150m程登り返しました。さほどの急登ではなく、少しだけですが自転車が使えました。送電線鉄塔が建つ小さなコブからは、九頭竜湖に朝霧が溜まっている様子が見え、やっと開けた視界に嬉しくなります。
平家岳は以前なかなか登ることの出来ない藪山で、この巡視路のお陰で割と簡単に登れるようになったそうです。とは言え、やはり鉄塔と送電線は目ざわりで、奥深い山なのに残念です。
AM.11:50 井岸山(1410m)着。
緩やかなアップダウンを繰り返し、平家岳を間近に見る井岸山の小さなピークに辿り着きました。
途中の稜線ではもう少し自転車が使えると思っていましたが、粘土質の掘り割り状の道に大きな石がはまっており、期待通りにはいきません。

さて、多くのWeb Siteでここからの勇姿を見ていました。「平家岳ピークから真っ直ぐに降りている道を、なんとかMTBで下れないだろうか・・・。」
こんな事を思うのは私だけでしょうか? 
スキーヤーが白い斜面に魅せられるのと全く同じです。

井岸山を登る途中の鞍部付近に、板取(岐阜)方面への分岐点がありました。この巡視路は、この先も延々と続いています。 
健脚は美濃平家岳も往復するようです。

AM. 11:15 平家岳ピーク着。
先着の男性が二人いて、「あの山は? こちらのピークは?」と、山談議に花が咲いています。大汗をかいて登って来たピークには、ただゝのどかな眺めがぐるり四方を取り囲んでいました。
私もビールを開け、奥美濃藪山の話を聞かせてもらいました。
暫くして、中高年男女5人組が上がって来ました。帰宅してWebでもう一度調べてみたのですが、この山は春夏多くの花を楽しめる人気の山でした。 
さていよいよ下山にかかります。 楽しみにしていたピークからのダウンヒルは、登りの途中であきらめました。写真では良さそうに見えたのですが、やはり石がはまり込んだ掘り割りの道でした。
下山途中多くの登山者とすれ違うことになりました。大方の登山者は自転車に好意的でしたが、
一人の女性からすれ違いざまにこんな事を言われました。
「自転車が走るんじゃあ、道も荒れるわ。」
この根っ子や粘土や石がはまり込んだ歩き辛い掘り割りの道は、自転車のせいだというのです・・・。

一瞬血の気が引いていきましたが、煩わしい長歩きについ八つ当たりしたのだと自分を納得させました。
「登山道は人為的に切り開いたもの。自然破壊はその瞬間に始まっているのでは?」
といって自分を正当化しているのではありません。 
昨今の環境保護思想では破壊者のイメージから逃れることは難しく、
これはMTBにとって永遠の課題かもしれません。

PM. 2:00 登山口駐車場着。

結局、MTBに乗車出来たのは全体の2割程度だと思います。あまりMTB向きではありませんでした。
今年はいつまでも暖かく、まだ見とれる程の紅葉に出会えていません。この日は少ない秋色を探し、わずかな落ち葉を踏みしめるという、ちょっと寂しい秋山でした。